高度プロフェッショナル制度(以下「高プロ制度」といいます。)とは、平成30年6月に国会で成立した比較的新しい働き方に関する制度です。

規定は、労働基準法(以下「労基法」といいます。)第41条の2に置かれており、労基法に本来定められている労働時間、休憩、法定休日及び深夜の割増賃金に関する規定の適用を除外する制度です。
高プロ制度以前から、裁量労働制という似通った制度が定められておりますが、これと大きく違うのは、裁量労働制に、休憩、法定休日及び深夜の割増賃金の規定の適用があることです。
つまり、高プロ制度は、法定休日や深夜などに労働する必要が生じて労働したとしても、これに対する割増賃金はつきません。
この点、高プロ制度は、使用者に対し、労働者の健康管理時間の把握、一定の休日の確保、その他労働時間に関する一定の措置を取る必要があるよう定められているのですが、それを履行している限り、高プロ制度による割増賃金等の適用除外は有効です。
高プロ制度の導入には
このように、労基法の根幹たる労働時間とそれに伴う割増賃金の適用除外を招く高プロ制度ですから、使用者側がこれを導入するにあたっては、労使委員会で労基法が求める事項の決議を経る必要があります。
また、対象となる業務も厚生労働省令で定める業務に限られますし、対象労働者も労使委員会で審議し決議した範囲であり、1年間の賃金が1075万円以上の者に限られることになります。
したがって、使用者側で、こういった手続をしっかり取っておかなければ、高プロ制度の適用はありません。
高プロ制度と労働者の同意
もっとも重要なポイントですが、高プロ制度は、労働者が同意しない限り適用されないということが挙げられます。
したがって、高プロ制度の打診が労働者にあり、労働者がこれに同意することで、はじめて高プロ制度が当該労働者に適用されることになります。
高プロ制度の適用期間は、1年未満の有期労働者契約を締結している労働者については、この労働契約の期間、無期労働契約または1年以上の有期労働契約を締結している労働者については、長くとも1年とされています。
このため、期間が経過すれば、改めて労働者から同意を取らなければなりません。
期間途中の撤回は
それでは、労働者が高プロ制度に同意して、しばらく適用を受けたが、やはり、高プロ制度を続けたくないとなった場合、労働者は、合意で定めた期間中、高プロ制度に拘束され続けるのでしょうか。
この点、途中での撤回は可能となっております。
厚生労働省の定める高プロの指針は、高プロ制度導入の際の労使委員会の決議において、「撤回の申出先となる部署及び担当者、撤回の申出方法等その具体的内容を明らかにすることが必要である。」、「本人同意を撤回した対象労働者をそのことを理由として不利益に扱ってはならない」(厚生労働省告示第八十八号第3の7(1)イ及びロ)としています。
したがって、期間途中においても、労働者は、高プロ制度の同意を撤回することは可能です。
撤回した後は、その時点から、割増賃金等の適用除外がなくなります。
また、撤回したからといって、当該労働者に不利益な扱いをしてはならないとされていますから、撤回をもって、会社が当該労働者に解雇や降格などの不利益な処置をすることは違法です。
なお、厚生労働省からも「高度プロフェッショナル制度 わかりやすい解説」というパンフレットも提供されています。
詳しくお知りになりたい方は、こちらも参照ください。
※労働関係をめぐる法律問題に関する別のブログは次のとおりとなります。
併せて、ご閲覧下さい。
「会社を辞めるためには、どのくらい前に予告したらいいでしょうか。」
