ギャンブルが原因の人や二回目の人の自己破産は?

 長年、弁護士をやっていますと、債務整理の相談を受けた際に、多額の借金の原因として競馬やパチンコなどのギャンブル、投資による失敗などが見受けられることもあります。

 また、過去に一度、別の弁護士のところで自己破産申立をしてもらったことがあり、実は2度目の自己破産申立を考えているという方もよくいらっしゃいます。

 このような方々が自己破産の手続を取る場合、どのような問題点があるでしょうか。

 

 

免責について

 

 個人の方が自己破産申立を行う最大・最終の目的は、裁判所から免責の決定を得ることです。

 この免責決定というのは、平たく言えば、債務者が自己破産を申立した時に負っていた債務(借金)を全て、法的に支払義務なし(チャラ)にするものです。

 免責により、自己破産を申立てした破産者は多額の債務を免れることができ、未来に向けて、経済的再生を試みることができるようになります。

 

 なお、余談ですが、自己破産手続でも免責されない債権が一部あります。

 こちらについては、「個人の自己破産でよくある質問 5選」というブログ投稿記事に記載しておりますので、ご参照ください。

 

免責不許可事由について

 

 自己破産の目標である免責なのですが、この免責、裁判官が破産者の申立記録や債権者らからの意見申述を確認して、免責をしてよいかどうか判断を下します。

 この点、破産に至る経緯や申立時の対応などにおいて、典型的な悪事情とも言うべきものについては、免責不許可事由(免責を許可しない事由)として、法律に定めており、当該事由にあたらない場合、免責を許可することとなっています(破産法第252条1項)。

 

 では、免責不許可事由となるのは何かについては、上記条項をご確認いただければと思いますが、本稿において、触れておきたいのは、次の2つです。

 

 一つは、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」です。

 これは、前述したギャンブルや投資により多額の借金を負った事例が該当します。

 

 そして、もう一つは、「免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日」「から七年以内に免責許可の申立てがあったこと」です。

 こちらは、7年の期間をおかずに二度目の自己破産を申し立てる方が該当します。

 なお、免責許可の申立は=自己破産申立と捉えてもらって構いません。

 

免責不許可事由にあたると免責されないのか

 

 上述した免責不許可事由にあたるとしても、免責が認められないと、直ちに悲観的になるべきではありません。

 

 破産法は、免責不許可「事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる」(同法第252条2項)としており、あらゆる事情を酌んだ上で、免責不許可事由のある破産者にも免責を与えることができるとしています。

 これを裁量免責と呼んでいます。

 

 したがって、ギャンブルなどの浪費で自己破産に至った方、以前の自己破産の免責確定から7年を経過せずに再度の自己破産申立に至った方については、破産に至るまでの経緯で同情すべき事情、自己破産決意に至ってからの真摯な反省、今後の経済的再生に対する計画的態度などを裁判所に示していくことによって、何とか裁判所に免責を認めてもらえるよう努力していく必要があります。

 

裁判所に呼ばれることも

 

 通常の自己破産申立事件は、然したる財産もなく、生活のために止む無く借金がかさんだという同情すべき事情も多く、書面のみの審理により、免責に至ることが多くなっています。

 

 しかし、上述したギャンブルによるものであったり、二度目の自己破産であったりというものは、本来、免責不許可とすべき事由として定めてあるものですから、裁判所も、簡単に書面審理で免責を許可するというわけにもいかなくなってきます。

 

 このため、裁判所の判断によりますが、破産手続中、裁判所に破産者を呼んで、裁判官が破産に至る経緯の話を聞いたり、免責に関して訓示をするという手続が取られたりすることがあります。

 これらは、前者を破産審尋と呼び、後者を免責審尋と呼びます。

 

管財人を選任されることも

 

 上記は裁判所のみで行う対処方針となります。

 しかし、ギャンブルや二度目の自己破産については、真摯な反省を促したり、今後の経済的再生のための教育的な配慮をしなければならないという判断が裁判所に働きやすくなります。

 

 こういった対処が必要と裁判所が判断した場合、裁判所が破産者を定期的に呼び出して監督・教育するのは難しいので、裁判所は、第三者弁護士を破産管財人に選任し、この管財人に実質的な破産者の監督・教育を任せることにします。

 

 本来、管財人は、破産者の財産を換価し、債権者らへ配当する任を負う者ですが、事実上、破産者の教育・監督の任のために管財人を選任するのです。

 このため、業界用語としては、免責観察型の管財手続などと呼ばれています。

 

 破産管財人がつけられる事案となりますと、破産手続の終了までの期間が延びますし、管財人との面談を何度かくりかえさなければなりません。

 そして何よりも、管財人選任の場合に、裁判所に納めなければならない予納金が20万円以上求められることになり、経済的にも大きな負担となります。

 

 そこで、申立をする弁護士としては、できるかぎり管財人を回避した手続を進めるよう裁判所に上申するなどしますが、私の経験上、悪事情がある場合、管財人選任もある程度覚悟して自己破産申立を計画するべきだと感じています。

 

最初の相談時には正直に

 

 このようにギャンブルが理由の自己破産であったり、二度目の自己破産であったりしても、免責は認められる余地が十分にあるものです。

 もちろん、破産手続中の裁判所からの視線はかなり厳しくなりますし、管財人選任により金銭的にも、時間や労力的にも大変さは増しますが、まじめに反省をし、経済的再生を強く希望される場合、免責を不許可とされることは滅多にないものと実感しています。

 

 ただ、自己破産の相談をする際、ギャンブルをしていたであるとか、過去に破産をしたであるとか、こういった事情を隠して相談をされる方がございます。

 しかし、これだけは絶対にしないで、正直にご説明ください。

 

 今後の申立までの準備段取り、弁護士費用や裁判所への予納金の計算・積立などに大きな影響を及ぼすものですし、何よりも弁護士と依頼者の信頼関係を崩すものとして、辞任事由となりかねません。

 言いづらい事情かと思いますが、正直に話をした上で認められた免責決定だからこそ有効なのです。

 その点は、ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

借金をめぐる法律問題に関する別のブログは次のとおりとなります。  

 併せて、ご閲覧下さい。

 

 「借金が払えない、でも、マイホームを残したいときは?」

 「小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは」

 「個人の自己破産でよくある質問 5選」

 「個人の自己破産でよくある質問 続5選」

 

 

2024年07月19日