夫婦間の婚姻費用や養育費を算定するにあったっては、裁判所のホームページ上で標準算定表というものが提供されております。
これによって、一般の方々でも、夫婦それぞれの収入や子どもさんの状況を当てはめることで、おおよその月額を算定することが可能です。
ここで、おおよそと言いますのは、夫婦それぞれの事情、お子さんの状況などにより、変動要素が加味されるためであり、上記算定表どおりにいかないこともありますが、大体は、この算定表から大きく外れることはありません。
しかし、この算定表、支払義務者の収入が給与で2000万円(自営では1567万円)までのものとなっており、これを超える年収のある義務者(以下、ここでは「高額所得者」といいます。)に対し、いくらを請求すべきであるのか、いまいちわかりません。
こういった上限を超えた収入がある場合、特に、個別的な事情が多く含まれている事案が多く、単純に算定表で示すのは容易ではありません。
ただ、全く、算定に関する考え方がないと混乱しますので、次のような算定方法が審判例であるとか、当事者の主張だとかに現れてきています。
以下、婚姻費用算定に現れてくる考え方のいくつかをご紹介します。
標準算定表の上限までとする考え方
義務者の年収が上限を超えた部分については、資産形成に充てられているもの(つまりは離婚の財産分与で考慮されるべきもの)として、義務者の上限で算定される額で頭打ちするというものです。
ただし、義務者の上限超過額が大きくなっていくようであれば、後述の方法により、算定をしていくことも考えられます。
基礎収入割合を修正する考え方
少し難しい話で恐縮ですが、標準算定表作成にあたっては、権利者と義務者の基礎収入というものがベースになっています。
基礎収入というのは、総収入から租税公課・職業費・特別経費といった必要な出費部分をを控除したものです。
この権利者・義務者の基礎収入を突き合わせて、標準算定方式により婚姻費用などが出されています。
一定の範囲における総収入に対する基礎収入割合(●●%など)を決めることで、基礎収入の算出がされています。
そこで、高額所得者の事例においても、標準算定方式をベースにしながらも、基礎収入割合を高額所得者の事情により修正して婚姻費用の算出をしようという処理の仕方です。
なお、基礎収入割合については、高額所得者の場合、累進課税制度により、課税される額が大きくなりますし、後述する貯蓄率を考慮する必要があるため、結果的に低下する方向となります。
高額所得者の貯蓄率の特性を考慮する考え方
高額所得者の場合は、基礎収入中、貯蓄や資産形成に大きく反映されているのだとして、基礎収入から高額所得者の貯蓄率を控除するという方法もあります。
結果的には、上述した基礎収入割合を修正する方法と数字的に変わりが出るものではないとされています。
標準算定方法によらずに検討する考え方
同居していた時期の生活費と別居後の生活費の状況を比較し、可能な限り、同居時の生活水準を維持できる婚姻費用にしようという処理の仕方です。
もちろん、同居時と別居時において異なる事情を個々に考慮して修正することはあります。
養育費は?
以上のような算定に関する考え方を用いて、高額所得者にかかる婚姻費用の判断がされていますが、養育費については、標準算定表の上限をベースに個別に事情考慮する処理の仕方が一般的です。
高額所得者にとって、婚姻費用や養育費の月額が、どの程度になるかは、非常に大きな関心事かと思います。
上記のような考え方を把握することで、裁判所での調停への臨み方、主張の仕方への一助になるのではないでしょうか。
※高額所得者をめぐる法律問題に関する別のブログは次のとおりとなります。
併せて、ご閲覧下さい。