私立学校の就業規則などでは、懲戒解雇となった場合に、退職金を不支給としたり、減額したりできる規則などが定められていることが多いのではないかと思います。
私立学校の教職員や教授が懲戒解雇とされた場合、学校側は退職金の不支給や減額を自由に決定できるものかどうかというとそういうわけではありません。
退職金の性質については、長年の功労報償的性格と賃金の後払い的性格を併せ持つものとされております。
そこで、賃金の後払い的性格を考えるならば、仮に、懲戒解雇と言えども、退職金を不支給にしたり、減額したりすることも慎重に判断せざるを得ません。
退職金不支給や減額について、裁判で多く争われていますが、裁判所がキーワードとするのは、「それまでの勤続の功を抹消又は減殺するほどの著しい背信行為」があったかどうかという部分です。
懲戒解雇とされる事由も千差万別だと思いますが、諸事情を考慮しながら、退職金不支給や減額が相当か否かを判断していることになります。
もちろん、懲戒解雇で退職金不支給や減額とされるには、就業規則等により、その旨の規定があることも必要です。
懲戒解雇だからと言って、直ちに退職金を諦めるのは早計かもしれません。

一方で、国公立の公務員教職員の懲戒免職の場合はどうでしょうか。
かつては、懲戒免職となれば、退職手当不支給とする旨の規定が設けられていましたが、公務員と言えども、退職手当が功労報償と賃金後払いの二側面があることは否定できません。
このため、国家公務員退職手当法をはじめ、各地方自治体もその条例にて、懲戒免職=退職手当不支給とせず、事案の内容(退職をした者が占めていた職の職務及び責任、当該退職をした者が行つた非違の内容及び程度、当該非違が公務に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の政令で定める事情を勘案)に応じて、不支給や減額ができるという規定に変わりました。
例えば、大阪市でも、「職員の退職手当に関する条例」第12条でその旨の定めがされています。この内容については、更に、「退職手当の解釈及び運用方針について」において、解釈方針を示されております。
民間の退職金支給の判断方法に準じて、公務員の退職手当の判断も後追いしてきたところです。。
ただ、裁判所で争われた場合、民間と公務員では、全く同一のレベルで是非を判断されるかと言うと、この点は、公務員の特殊性や行政の裁量権の尊重の観点から、民間よりは、公務員にとって、厳粛に審査される可能性は否定できません。
民間であれ、公務員であれ、退職金不支給や減額は、その後の人生設計を大きく狂わすものとなります。
争える余地があるのであれば、審査請求や司法の審査を受けてみるのも、一つの考えかもしれません。