加害者への損害賠償請求の時効は?物損や人損で違いは?

 交通事故による損害賠償請求は、民法第709条の不法行為に基づく損害賠償請求権です。

 この損害賠償請求権は、民法第724条において、その時効期間が定められており、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」とされています。

 

 したがって、上記文脈からすれば、交通事故の発生で損害と加害者を知り得ることが多いため、事故日から3年で時効にかかり消滅するとなります。

 ただ、加害者が判明していない場合は、判明してからとなります。

 加害者不明のままであれば、時効はスタートしませんが、20年という除斥期間の定めがありますので、この場合でも、事故発生日から20年を経過すると損害賠償請求権は消滅します。

 

 本稿では、前者の3年の消滅時効を詳説します。

 

 この3年、単純に事故発生日から3年と考えるものなのかというと、そこには損害の内容に応じて、区々考え方があります。

 

 まず、物損ですが、物損は、事故発生日から単純に3年と考えます。

 事故発生時点をもって、損害の全容がある程度把握できるからです。


 一方で、人損はどうなのかですが、大きく見ると、事故発生日とする見解、症状固定時とする見解に分かれますし、個別の損害項目で、それぞれ起算点が異なるのかという見解もあって、分かれています。

 

 後遺障害に関する損害については、最高裁判例(平成16年12月24日判決)において、症状固定時に損害を知ったことになるという理解を示しています。

 症状固定に至るまでの傷害に関する損害は、上記判例で明示はされていません。

 ただ、傷害については、治療行為とその症状緩和といった特殊事情から、事故発生日における損害の把握というものに馴染まないのではないかという考え方があり、現在の実務上は、やはり症状固定時を基準とすべきという見解が強くなっています。

 

 以上からすると、少なくとも後遺障害が発生する事案では、後遺障害に関する損害については、症状固定時を起算点とする形にして問題ないと言えます。

 反面、傷害に関する損害部分の起算点は、事故発生日から3年と考え、対処した方が無難であると言えます。

 

 なお、症状固定時自体(保険会社が治療打ち切りした時点と被害者が以後も継続して終了した時点等)の認定に争いが生じる場合もあります。

 仮に、請求者側が考える後日付の症状固定時でなく、相手方が主張する前日付の症状固定時が事実認定されると、それだけ時効の起算点が早まりますので、この点を加味して、時効の管理は注意が必要です。

 

 

2017年09月27日